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東京大学 生産技術研究所 物質・環境系部門 徳本研究室

研究内容RESEARCH

準結晶に関する研究

 「準結晶」は、固体を構造秩序によって分類すると「結晶」、「アモルファス」に次ぐ、「第3の固体」と呼ばれるもので、構造の長距離秩序はあるものの、周期性は持たないというのが特徴です。1984年に発見されて以来、これまでに100種類以上の合金で作製されています。

ファンデルワールス層状準結晶の作製

 準結晶は3次元準結晶と2次元準結晶に大別されます。3次元準結晶は正20面体対称性を持つもので、2次元準結晶は2次元の準周期層がそれと垂直な方向に周期的に積層した構造を持つものです。 2次元準結晶の中でも、層間がファンデルワールス力で結合している「ファンデルワールス層状準結晶」は、これまでに唯一Ta-Te系で作製されています。 元素制御やインターカレーション、デバイス構造にすることによるキャリア注入など、物性制御の自由度があるため、新しい物性が発現する可能性を秘めています。徳本研究室では、Ta-Te系ファンデルワールス層状準結晶を作製し、様々な電子物性の測定を行っています。



準結晶の超伝導に関する研究

 準結晶の超伝導は2018年に発見されたばかりです。準周期系における超伝導を担う電子対(クーパー対)はどのように形成されるのか、それにより現れる超伝導特性にはどのような特徴があるのか、という問いに答えるべく、精力的な研究が行われています。 徳本研究室では、最近、Ta-Te系準結晶が約1Kで超伝導を示すことを発見しました。これは、準結晶全体では2例目ですが、熱力学的に安定な準結晶では初のバルク超伝導で、超伝導転移温度が1例目と比較して約20倍高いため、準結晶の超伝導特性を実験的に明らかにする上で重要な役割を果たす物質として期待されています。


トポロジカル絶縁体に関する研究

トポロジカル絶縁体中転位の電気伝導

 トポロジカル絶縁体はバルクは絶縁体でありながら、端(三次元では表面)にヘリカルスピン偏極した特殊な金属状態が存在しています。 ここのような特殊な金属状態が三次元トポロジカル絶縁体の表面だけでなく、転位(結晶中の線状欠陥)においても存在し得ることが理論的に示されています。 当研究室では、トポロジカル絶縁体中転位の金属状態の実験的検証・評価のために、マイクロ・ナノスケールでの電気伝導測定に取り組んでいます。
 トポロジカル絶縁体中転位の金属状態を利用した技術展開として、熱電変換材料の高効率化が挙げられます。 熱電変換性能指数(ZT値)の向上のためには、熱伝導率が低く、かつ、電気伝導率が高いことが必要とされますが、これらは独立に制御できず、 一般に熱伝導率が低い場合は電気伝導率も低くなります。 これに対し、トポロジカル絶縁体中転位を利用すれば、転位伝導によって電気伝導度が上がり、一方、転位によるフォノン散乱によって熱伝導度が低く抑えられるため、 通常は相反する高い電気伝導度と低い熱伝導度を両立できるため、熱電変換性能指数の飛躍的な向上が期待されています。


トポロジカル絶縁体のバルク絶縁性向上

 トポロジカル絶縁体の表面や転位における特殊な金属状態を検出・抽出するために、バルクの電気伝導の寄与を減らすことが重要な課題の一つとなっています。 当研究室では、転位において特殊な金属状態が発現し得るトポロジカル絶縁体を対象とし、組成を緻密に制御することによりバルク絶縁性を向上させることに取り組んでいます。



                     
     
     

所在地

〒153-8505
東京都目黒区駒場4-6-1
東京大学 生産技術研究所 Fe-304